確かに言われてみれば、たまに食事をしているときに右下の奥歯がずきんと痛むことはあった。
しかし、常に痛いわけではなく、大したことないだろうと何年も放置していたが、2019年5月21日早朝、ついにその時が訪れてしまった。
朝、目が覚めた瞬間、舌に何か尖ったものが触った。奥歯が欠けてしまったのである。
あまりのショックで呆然としてしまったが、食事をするときはもちろん、普通に生活していても歯の欠けてしまった部分に舌があたり、痛みがあったため、急ぎ近所の歯科へ行った。
当日中に応急処置はしてもらったが、レントゲン検査の結果、欠けてしまった奥歯は神経のかなり深いところまで虫歯が進行してしまっていたようで、ここからこの時予想だにしていなかった1年半という長期にわたる治療が始まったのである。
アクシデント発生から専門医への通院
仕事をしている関係上、なかなか平日に通院できなかったこともあり、月に2回程度治療を続けていたが、半年ほど経った2019年10月、治療中にアクシデントが発生した。
神経の治療はファイルと呼ばれる非常に細い器具を使って行うのだが、そのファイルが治療中に折れてしまったというのだ。
確かに稀にファイルが治療中に折れてしまうことはあるらしく、私の歯の神経の構造も複雑な構造をしていたということで、破損したファイルの除去、およびその先の治療を専門医の下で継続することとなった。
2019年11月からは高田馬場にある専門医の方へ通院し、破損したファイルの除去、および神経の治療の続きをしていただいた。こちらも約半年ほど治療を続けたが、流石は専門医というだけあって、破損したファイルの除去はもちろん、私の複雑な構造をしている神経でも見事に治療をしていただいた。
今回はもともと通っていた歯科医院の責任ということで、自己負担はなく専門医にて治療を行うことができたが、専門医にはマイクロスコープという顕微鏡のような機器があり、専門医による治療ということで、自己負担で通院していたらいくらかかっていたのだろうと思ったことは今でも鮮明に覚えている。
ただ、神経の治療は無事に終わったのだが、この時、更なる試練が待ち構えていたのであった。
治療した歯の奥にある親不知も抜いた方がいい
2020年5月、世の中は緊急事態宣言が発令されている中、専門医による神経の治療は最終回を迎えた。
これまで若干険しい表情で治療を続けていた先生の顔が、この日は明るく、どこかほっとしたような印象さえあった。
「これまで長い間、お疲れ様でした。時間はかかってしまいましたが、無事治療は終わりました。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「神経の治療はこれで大丈夫だと思うのですが、治療していた歯の奥にある親不知が横向きに生えていて、それが動くことでまた奥歯が痛む可能性があります。最悪の場合、今回治療した歯を抜歯しなければならない可能性もありますので、それを避けるために、親不知を抜歯した方が良いと思います。」
「・・・」
約1年にわたる神経の治療が終わってほっとしたのも束の間、今度は親不知を抜いた方が良いというのである。
流石にその場では判断ができず、その時は「通っていた歯科の先生と相談して決めます」とだけ言って帰宅した。
親不知の抜歯失敗からまたも専門医での抜歯
その後、転職の時期と重なってしまったこともあり、もともと通っていた歯科に連絡するのが遅くなってしまったのだが、2020年8月下旬、久しぶりにもともと通っていた歯科へ行った。
そこで親不知を抜いた方が良いと専門医から言われたことを伝え、こちらの先生にも改めて診てもらったのだが、やはり同じ見解だったため、抜歯する方向となった。
予約が込み合っていたこともあり、1ヶ月後の9月下旬に親不知を抜歯することとなった。
その間、自分でも調べたり、友人に話を聞いたりしたのだが、横向きに歯茎に埋まっているのは抜歯が難しいケースらしく、情報を入れれば入れるほど不安になり、1ヶ月間、生きた心地がしなかった。
そして迎えた2020年9月26日、いよいよ抜歯をすることとなった。
事前に友人から聞いていた通り、歯肉の切開や歯を削るのは麻酔のおかげでほとんど痛みはなかった。
ただ、十分すぎる準備期間が逆に不安を増幅させてしまっていたのか、最後の最後で麻酔が効かなくなってしまい、まさかの抜歯を中断することに。またしても別の口腔外科で再度抜歯を行うこととなった。
この1ヶ月、この日に照準を合わせてきたというのに、抜歯を完了させることができず、とてもやるせない気持ちになった。
ちなみに、抜歯は完了しなかったが、歯肉の切開や抜歯を途中まで試みたことに体が反応してしまったのか、翌日には高熱が出て、数日間は顔が腫れて、食事や会話がしづらかった。
抜歯失敗からおよそ10日後の10月7日、別の口腔外科で再度抜歯を行うこととなった。
前回、緊張して麻酔が効かなかったことがあるので、なるべくリラックスして臨もうと思ったのだが、やはり治療台の椅子に座ると緊張してしまった。
ところが、こちらもまた流石は口腔外科、前回1時間弱かかって抜けなかったものが、あっという間に抜けてしまった(どちらかというとすべて砕いたという表現の方が正しいか)。麻酔を刺す時こそ痛かったが、感覚的には5分くらいで終わった気がした。
そして、2回目だったからか、体の過剰反応もほとんどなく、発熱も腫れもなかった。
一連の治療を終えて
2019年の5月に虫歯によって奥歯が欠けてしまったことに端を発した今回の一連の治療を終えて、思ったこと、皆さんにお伝えしたいことが2つあります。
ひとつは歯は大事にしようということ。
以前、8020(80歳で20本自分の歯があるようにしましょう)という言葉を聞いたことがあります。
今回は幸いにも奥歯の抜歯は回避することができましたが、治療中はもちろん、歯医者に通うこと自体も大変でしたので、身をもって歯を大切にしていこうと思いました。
会社の健康保険で歯科検診を無料や補助が出て受けられるところもあると思いますので、ぜひ皆さんもご自身の歯を大切にしていただければと思います。
今ひとつは目的と手段を逆にとらえてしまっていたということ。
親不知の抜歯は、神経の治療を行った奥歯が今後また痛くなることを防ぐために行ったのですが、いつの間にか親不知を抜くことが目的となってしまっていました。
仕事でも何でもそうだと思いますが、目的と手段が逆になってしまうと、なかなか思うような成果が出せないと思います。
2020年11月現在、抜歯を行ってから間もなく1ヶ月が経ち、まだ少し抜歯したところに食べ物が引っかかる状況は続いておりますが、これから仕事をしていく上で、手段を目的化することがないように気を付けていきたいと思っております。
たかが親不知の抜歯から手段の目的化はよろしくないということを学びましたという、タイトルからは全く想像できなかったであろう結末で今回は終わろうと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。